私は愛されていなかったのか?私は子どもたちを愛せているか?

目次

小さい頃の記憶

小さい頃の私の記憶はモノクロで、その風景に両親はいない。

思い出す実家の風景は小さな居間でコタツに入っている。
そこには祖母がいて、横になって一緒にテレビを見ている。
両親は仕事で忙しく、小さい頃はずっと祖母と一緒だった。祖母は私にたくさんのことを教えてくれた。りんごの皮むき、編み物、仏さまや神さまは大事にすること、人には優しくすること…

私は両親に褒められた記憶がない。
テストでいい点数をとっても「まだまだ頑張れるはずだ」
スポーツで頑張っても「お前の実力はそんなもんじゃないだろう」
勉強を頑張ってほぼ5をとっても、苦手な美術で3だったことを指摘される。
生活面でできていないことを指摘される。

母に成績表を見せたら「私では分からないから、お父さんに見せて」と言われたこともある。父からは全く褒めてもらえない。

とても寂しかった。
悲しかった。

もっと褒めてほしかった。
認めてほしかった。
愛してほしかった。
抱きしめてほしかった。
「大切に思っているよ」と言ってほしかった。

人には親切にしなきゃいけない。
人に迷惑をかけてはいけない。
人には感謝しなければいけない。
お前には感謝が足りない。

ずっとそんなことばかり言われていた。

私は「だめな子」だと、ずっと思い込んでいた。
私の心の中にはぽっかりと穴が開いていた。

最近、子どもの頃のことを思い出すと、小さな小さなかわいそうな私のことを思い出していつも涙が出ていた。

親になっての葛藤

そんな私が結婚し、三人の子どもたちに囲まれている。
毎日幸せだ。
でもいつも不安が押し寄せる。
「私は子どもたちを愛せているのだろうか」
という、どうしようもない不安が。

私の愛情表現は毎日子どもたちにご飯を作って食べさせることだった。
栄養バランスを考えて、苦手な野菜や魚も食べてもらえるように工夫して、手作りをするのが愛情だと思っていた。

長女は離乳食のころから全然食べない子で、時間をかけて作ったおかゆや頑張って裏ごしした野菜を一口も口にしないことは日常だった。
保育園に通うようになり、保育園では苦手な食材も頑張って食べているらしいので、レシピをもらってきてその通りに作ってみるが長女は「うべぇっ」と吐き出す。
褒めても食べない。
怒っても食べない。
何度も無理やり口に入れようとしたが、断固拒否。
とても悲しかった。
私の愛情を受け取ってくれないことが悲しくて悲しくて、それがだんだん怒りに変わっていった。
「食べなさい!」と大声を出したことも一度や二度ではない。

離乳食教室で食事は楽しい雰囲気で、食べなくても大丈夫!
といわれても、頭では分かっていても、私の心が納得しない。

誰かに相談しても「そのうち食べるようになるよ!」と慰めてはもらえるが、頑張って作ったという私の行為と子どもにご飯を食べてもらいたいという私の思いに対する共感はもらえない。

辛かった。悲しかった。苦しかった…

「あぁ、そうなんだ…」と腑に落ちた

この前、長女に聞いてみた。
「ママにどんなことを言われたらうれしい?どんなふうにされたらうれしい?」
すると長女は迷わずに
「ママにぎゅってしてもらって、『大好きだよ』って言ってほしい」
と答えてくれた。

あれ?これって、私がずーっと言われたい、されたいと望んでいたこと…

それまでも子どもたちには心から「大好きだよ」と伝えていたし、もちろんぎゅっと抱きしめていた。でもなんだか居心地の悪さを感じていた。私が言ってもいいのだろうかと感じていたのかもしれない。

それまで私が一生懸命で、でも受け取ってもらえない「食事を作って食べてもらうこと」で愛情を表現しなくていいんだと思えたら、一気に肩の荷が下りた。

もちろん今まで通りに、毎日食事は作るし、栄養のバランスも考えているし、食事を作ることに関しては何も変わってはいないし、長女も相変わらず食べないのは変わらない。
でも長女の行動でいちいち傷つかなくなった。
彼女にとって「母親が毎日食事を作ってくれること」と「自分が愛されていること」は全くイコールでなかった。

「あぁ、そうなんだ…」と腑に落ちた。

抱きしめて「大好きだよ」と言った時、長女はとても嬉しそうに安心した表情をしていた。それを見ていた夫も涙で目が潤んでいた。
長女にも夫にもずっと悲しい思いをさせていたんだと心から反省した。

その後の私の気持ちの変化

それから数日後の夜、子どもたちを寝かしつけている時にこんなことがあった。

長女)「ママのお隣で寝るの!」
長男)「僕も!」
次女)「わーわー!!(私も!)」
と、横になっている私のまわりで大騒ぎ。
いつもなら「うるさいなぁ。早く寝てくれ!」とイライライライラ…

でもその時は「あぁ、私こんなに愛されてるんだ…」と心の底から思い、涙がでました。子どもたちに泣いているのを心配されないように、ひっそりと堪えていましたが、とても温かいものに包まれたような気持ち。
「いろいろあるけど、大丈夫」と思えた出来事でした。

親との関係に変化はあったか

母にはメールで伝えた。
自分が愛されていないと思っていたこと。抱きしめて大好きだよって言ってほしかったこと。それでも両親はちゃんと育ててくれたこと。特に恨んではいないこと。自分は今幸せだということ
返信はいつものトーンで返ってきた。実際に面と向かって伝えたわけではないので、母の本当の思いはどうなのかは分からない。
でも「毎晩、私のぬくもりは嬉しかった」そうです。

私の欲しい形ではなかったので全く気が付きませんでしたが、母は母なりに私を愛していたようです。

年末に実家に帰ったのですが、特に親との関係に変化はありませんでした。
それでいいと思っています。
許すとか許さないとかそういう話ではなくて「あぁそうなんだぁ…」というのが私の今の気持ち。

親に愛されたとか愛されなかったとかそういうことは関係なく、私は私で子どもたちを愛していこうと決意を新たにしました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。